ナースキャップの想い出・・・その3
ラ・クリニカは開院19周年を迎えました。これも、何度もご来院頂いてる多くの患者様のおかげと、スタッフ一同、心から感謝をしております。
ラ・クリニカは開院19周年を迎えました。これも、何度もご来院頂いてる多くの患者様のおかげと、スタッフ一同、心から感謝をしております。
僕がまだ駆け出しの外科医の頃です。その看護婦さんはとてもベテランでしたが、とても小柄で小顔でした。ですからナースキャップを着けると、まるで頭に羽が生えていて空を飛べるんじゃないかと思えるぐらい、それぐらいナースキャップが大きく見えました。その病院はまるで野戦病院のように忙しく、僕もたくさんの患者さんを抱えていて毎日病院の中を走り回って、家にもほとんど帰れないぐらいでした。もちろん重病の患者さんがほとんどでした。
そんな忙しい中、一人の患者さんが入院しました。その患者さんは癌でしたがさほど進行しておらず、術前検査にも全く異常はなく、通常の手術をすれば命に関わることはまずないと考えられる患者さんでした。ですから僕も特に心配はしていませんでした。でもある日の病棟回診の時、その看護婦さんが僕を見上げながら(僕は背が高くはないのですが)こう言いました。「先生、わたしゃ准看だし(※注)、先生みたいに勉強もしていないから検査結果を見ても正常か異常かわからない。でもね、あの患者さんには注意した方がいいよ。何かいやな感じがする。」
その患者さんは確かに癌でしたが通常の術前検査には全く異常はありませんでした。でも僕はその看護婦さんの言葉が頭から離れず、検査データをすべて洗い直しました。しかし全く以上はありませんでした。そこで患者さんには「念のため」と言って癌の手術には全く関係ない検査をしました。その結果・・・手術自体には全く支障はありませんが、術後それが発症したら大変なことにもなりかねない病気が見つかりました。そしてその専門の医師と連携を取りながら手術をして、術後も問題なく退院されました。
僕がこのエピソードで言いたいのは、学校で習うことなんて人生の中ではごくごく一部にしか過ぎない、学歴や肩書きなんて「屁(へ)にもならないようなもの」だと(下品ですいませんm(__)m)いうことです。その看護婦さんが看護学校に通ったのはせいぜい2年ぐらいでしょう。でも看護師になってから何十年もずっと患者さんを見つめ続けてきたからこそ検査では分からないような異常を感じ取ることが出来たのでしょう。
4月になりました。看護婦さんや医者だけではなく、新しく社会人になった方も多いと思います。社会人になって「おまえも一人前になったなぁ」なんて言われるかもしれませんが、一人前になるのはまだまだ何十年も先です。これからの人生で学ばなくてはならないことは学校で習ったことの何百倍、いや何万倍もあります。と言う僕ももちろんまだまだ半人前です。
余談ですが、その看護婦さんは、東北のどこの方言か分かりませんが、自分のことを「わたしゃね」とか「あたしゃね」と言っていました∈^0^∋
※注:看護婦さんにも准看護師、正看護師、助産師、保健師など色々あるんですよ。